“売れない・定着しない”を変える──ディーラーの成果を左右するマネジメント再設計のススメ
- 錦一 織本
- 3月25日
- 読了時間: 7分
更新日:3月29日

目次
なぜ“売れない”のか、“定着しない”のか?
多くの自動車ディーラーが「販売台数が伸びない」「人材が育たない」「リピーターが定着しない」といった課題に直面しています。
こうした悩みの根本には、「現場のマネジメント機能が曖昧になっている」ことが少なくありません。
特に中小規模のディーラーでは、人員や配置の都合から、セールスとサービスの役割が“なんとなく”で分担されていたり、営業出身のマネージャーが整備部門も兼任していたりすることも少なくありません。
こうした体制は、限られた人数で店舗を回していくうえでやむを得ない選択でもありますが、その一方で役割と責任の境界が曖昧なまま続いてしまう”ことで、業績や人材育成に課題が表れやすいという側面もあります。
本記事では、現実的な人員体制の中でもできる範囲で、セールスマネージャーとサービスマネージャーの役割を明確に切り分け、求められるスキルやマネジメントの工夫を整理します。
また、現場で見えづらくなっている課題を「可視化」し、無理のない改善につなげるためのヒントを紹介します。
セールスマネージャーの役割:売上現場の“攻め”のマネジメント
セールスマネージャーは、ディーラーの“売上を生み出す最前線”を統括する役割です。
単に数字を追いかけるだけではなく、顧客との最初の接点から納車後の関係構築までを一貫して設計し、現場を動かす司令塔となるべき存在です。
ある先進的な店舗では、セールスマネージャーがセールス一人ひとりの商談内容を細かく把握し、時には同席して一緒にお客様のニーズを聞き出すサポートを行うなど、現場に深く入り込んだマネジメントを徹底しています。
1人で考えるよりも2人で考えた方が成約率が上がるという考え方のもと、商談結果だけを評価するのではなく、すべての商談にマネージャーが関与。これにより、取りこぼしを防ぎ、営業全体の成績の底上げに成功しています。
また、セールスの外出率を下げ、来店提案型に業務をシフト。店に来ていただけるお客様に集中し、提案・フォローを行う体制へと再設計しています。管理ボードや目標設定はセールス自らが設定する形式に変更し、主体性と責任感を育てています。
営業チーム全体として「毎週1人1台の成約をひとつの目安にする」や「平日の来店をしっかり受注につなげる」等を最低ラインとした目標管理を実施。数字を“個人の成果”ではなく“組織の底上げ”として捉え、日々の活動量と精度を可視化されたKPIで運用しています。
また、商談中にはマネージャー自身がヒアリングに介入し、クロージングには積極的に同席。結果がどうであれ「戦う姿勢」を見せることで、現場の士気を高めています。セールスが「1人で抱え込まない」文化づくりに成功している好例です。
教育体制にも力を入れており、毎週曜日を決めての勉強会を実施。月末には個別KPIに基づいた1on1面談を行い、課題のフィードバックと改善をルーティン化。こうした一連のマネジメントサイクルによって、セールスチーム全体の「活動量と質」を底上げしています。
主な業務と責任領域
販売戦略の設計と実行
市場動向を踏まえた商品戦略
月間・年間の販売目標設計
プロモーションやイベントの企画
営業スタッフの育成とマネジメント(スキルマップ、教育計画)
ロールプレイング・フィードバックの実施
モチベーション管理と評価制度の運用
商談プロセスの標準化とCRM活用
ヒアリング・クロージングへのマネージャー介入
納車後のフォロー設計(アンケート、車検提案、紹介獲得)
サービスマネージャーの役割:信頼と満足を積み上げる“守り”のマネジメント
サービスマネージャーは、整備・点検・修理といった技術対応にとどまらず、顧客満足を高め、再来店や紹介につなげる「関係性づくり」の役割を担います。
技術の進化が加速する中、EV・先進安全装備・コネクテッドなど、新しいサービスへの対応もマネージャーの仕事に含まれます。
現場では、曜日を決めて全員でメンテナンスプログラムの進捗確認を行い、点検は2ヶ月先・車検は3ヶ月先までの事前予約を徹底。これにより、繁閑の波をならし、平日入庫の安定化と作業効率の向上を実現しています。
また、点検や整備後のアフターコール、提案業務などにおいては、すべてのメカニックが対応するのではなく、サービスマネージャー候補や接客に適したメンバーが選抜的に担当。
たとえば、言葉を選ばず言えば「太いお客様」には営業担当が直接電話し、それ以外のフォローはサービス側で担うなど、人材特性を見極めた役割分担が現場の円滑な運営につながっています。
顧客体験の質を高めるために、アンケートや口コミを分析し、改善サイクルを回す取り組みも定着。点検時の案内、リコールや更新情報の通知など、プロアクティブな情報発信を仕組みとして組み込んでいます。
主な業務と責任領域
整備・修理業務のスケジューリングと品質管理
作業品質・安全基準・時間平準化の仕組み化
サービススタッフの育成と技術研修、資格支援
接客対応マニュアルの整備、フロント・営業との連携強化
来店から帰宅までの顧客体験設計、プロアクティブ連絡体制
定期レビュー・口コミ活用による改善サイクル運用
サービス部門の収益管理(メニュー設計、延長保証)
KPI設計(工賃売上、稼働率、CSスコア)
よくある“混同”が招く問題
サービスに実現性の低い売上目標を課している
→顧客満足よりも数字優先になり、技術品質や信頼性が損なわれる
営業とサービスの連携が不十分
→ 情報共有が機能せず、クレームや機会損失が頻発
マネジメント機能が属人的・曖昧
→ 部門ごとのバラつきが出て、組織力が発揮されにくい
役割の明確化と連携ルールの整備(報告・共有・責任範囲の定義)が不可欠です。
役割を明確化し、成果を最大化するには
役割の境界を引き直すことは簡単なように見えて、実は難易度の高い仕事です。
なぜなら、多くの現場では「マネージャー不在」が日常になっていて、誰がどの業務を担っているのかが属人的に回っているからです。
いざ整理しようとすると、
「本来の役割ってなんだっけ?」
「数字を任せたいけど、KPIの設計が難しい」
「評価制度を変えたら、逆にモチベーションが下がりそう」
といった壁にぶつかります。
さらに、営業とサービスのように文化の違う部門同士を横断的に整える作業には、現場だけでは対応しきれない複雑さがあります。
そこでDM and Tでは、ディーラー現場の支援において「マネージャー機能の再設計」を行っています。
これは、業務範囲とKPIの明文化、人材配置・情報フロー・評価制度・育成体系までを一貫して見直すプロジェクトです。
たとえば…
セールスマネージャーには「リード育成率」「クロージング同席数」などを新KPIに設定
サービスマネージャーには「再来店率」「アフターTEL実施率」「提案件数」などCS連動の指標を導入
営業×サービスの定例ミーティングでは「お客様の声」を中心に改善サイクルを共有
これにより、店舗全体が同じゴールを見据え、部門を超えた連携で成果を出す体制が構築されます。
最後に:マネージャーの成長が、ディーラーの未来を変える
営業とサービス、どちらもディーラーにとって欠かせない“両輪”です。
しかし、その両輪をうまく回すには、それぞれを導くマネージャーの存在と、その役割の明確化と仕組みづくりが不可欠です。
そして、それを現場だけで完結しようとすると、どうしても「目の前の業務に追われて整理できない」「動き出しても続かない」という課題が出てきます。
だからこそ、一度立ち止まって、外部の視点を取り入れながら“整える”フェーズが必要なのです。
DM and Tでは
・セールス/サービスマネージャー向けの現場研修
・店舗ごとのマネジメント機能設計支援
・KPI設計、育成プラン、評価制度の導入サポート
などを通じて、ディーラーの「マネジメント力強化」を支援しています。
「マネージャーを育てたい」「店の仕組みを整えたい」とお考えの方は、以下のお問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。